プロローグ

プロローグ【僕の恋愛の履歴】

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「だからさあ、そんなことやってても寂しくなるだけだって。電話してくる女って、彼氏がいる女か、他の男を好きな女だけなんだろう。そんな女の話なんて聞いてても、時間の無駄だって。いいかげん、彼女作れよ。さっさと童貞を卒業したいだろう?」

「うるせえな、ほっとけよ。電話してくるなとも言えないだろう。」

Contents

恋愛電話相談係

 大学時代、友人と女の話になると、最後はいつもこの会話で終わっていた。

 当時、私の夜は電話のベルで始まっていた。「ねえねえ、聞いてよ・・・。」で始まり、最低小1時間、長いときで5時間くらい話をしていたこともある。ただし、話をすると言っても、私が話をしているのは2割くらいで、残りの8割は相手の話を聞いている時間だ。その頃の私は、田舎から出てきたばかりの恋愛のイロハも全く分かっていないウブな男だった。そんな私に、なぜ女の子たちは、相談を持ちかけてくるのだろうと思ったことも多々ある。しかし、シンプルに私は相談を持ちかけられるのが好きだった。彼女たちの話をじっくり聞いて、一言、二言、アドバイスする。すると、「気持ちが楽になった」とか、「すっきりした。」と言ってもらえるのが、すこぶる気持ち良かったのだ。もちろん、奥手な私にとって、女の子と話ができるということだけで嬉しかったのだが。

 そんな日々の副産物として、私は2つの技術を身に着けていた。一つは女子の結論のない取りとめない話を苦も無く聞く技術。これは、男子にとってはなかなか難しいことなのだ。2つ目は、私がフィードバックすることによって、相手に自分の考えや気持ちを整理整頓させる技術だった。もちろん、女心がこういうものなのかということも勉強になったし、相談を通じて、リアルな恋愛を疑似体験できたのも収穫だった。

いい人で終わる学生時代

 2000年、私の学生生活も終わろうとしていた。相変わらず、私の部屋の電話は、夜になると鳴っていた。真摯に話を聞いていたのが、良かったのだろうか。この頃には、私の受けた恋愛相談時間は、1000時間を超えていたように思う。しかし、私自身の恋愛は全く良いところなしだった。まず、女の子に「いい人。」「いい男友達。」と思ってもらえても、恋愛対象になる1人の男としては、見てもらえない。今、考えると、これには一つ大きな原因があったのだが。何とかデートにこぎつけてても、次に繋がらない。万事がそんな調子だった。結局、本気で恋をした相手には、こっぴどく3回も振られ、その失恋の傷を癒すために一か月の逃避行に出かける始末だった。先輩からも、「SEXくらいしとかなあかんで。」と馬鹿にされた。結局、私の学生生活は、恋愛というパズルピースは欠けたまま終わってしまった。 

年上の彼女の指導

 2003年、クリスマス。私は、5歳年上の女性と付き合っていた。念願の彼女だった。しかし、彼女は私に「違うよ。」といつも口癖のようにダメだしをした。

 理由は、簡単。私が彼女にとって意に沿わない行動ばかりしていたからだった。女ごころと秋の空とは、よく言ったもので、彼女の気持ちはくるくる変わっていく。私は、そんな彼女についていくのが精一杯だった。彼女は何も分かっていない私を自分好みの男に育てるのが楽しかっただけかもしれない。風見鶏のような彼女に振り回され続けること、一年。あることをきっかけに、私たちの間に結婚の話が持ち上がった。けれど、当時の私にとっては、まさに青天の霹靂。結果として、私たちの関係は、あっさりと終わってしまった。けれど、私の中で確実に何かが変わっていた。

女の扱いに慣れている男

 2008年、晩秋。何度かの出会いと別れを繰り返し、私はまた1人になった。しかし、私は、いつの間にか女子の扱いに慣れていた。理由は分からない。付き合った彼女がことあるごとに、「手慣れてるなあ。」と呟いていたから、そう思っただけかもしれない。この頃の私は、今までの恋愛相談で得てきた知恵と知識と、実際に自分が恋愛をして得た経験を完全に融合させていた。誘われて、コンパに参加すれば、電話番号を聞かれ、お誘いのメールがやってきた。また、私から連絡すると、「待っていました。」とばかりに、一緒に食事に行ったこともある。女の子たちの私を見る目は、いつしか完全に変わっていたのだ。私は、真面目でお堅い職業の上に、癒し系を売りにしていたから、結婚願望のある女子たちから見れば格好のターゲットだったかもしれない。悪い男なら、それを逆手に女遊びをするのだろう。けれど、私は、そんなことに興味はなかった。それより、私は単純に嬉しかったのだ。「いい人。」という名の「どうでもいい人。」から脱出できたのが。

終わりの始まり

 2011年、春。私は結婚した。長いようで短かったシングルライフに終わりを告げた。私たちは、大勢の人に祝福を受けながら、新しい生活をスタートさせた。しばらくして、私はとある飲み会で、仲間から恋愛相談を受けた。しばらくいろんなことが忙しく、恋愛相談を受ける機会も減っていたので、少し戸惑いがあった。けれど、昔と同じスタンスで話を聞き、一言、二言、アドバイスした。彼は、「なるほど、やってみるよ。」と喜んでくれた。そのとき、私は思ったんだ。私にとっては当たり前となってしまっていることでも、世の中にはそれを必要としている人がたくさんいることを。

 

 さあ、恋をしよう。

 恋愛には、辛いこともたくさんあるし、悲しい結末に終わることもたくさんある。

 しかし、ときめく出会い、素晴らしい出来事、愛しいと思える瞬間を

 与えてくれるのも恋愛なのだ。

 

 思い切って扉を開けてみよう。

 そこには、あなたと赤い糸で結ばれている人がいるのだから。

 


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