「忘れていくのよ、好きになったこと以外はね。」
これはあだち充さん作の「H2」というマンガに出てくるセリフの一つだ。10年くらい前に読んだマンガなので、記憶があいまいで微妙に言葉が違うかもしれないが。当時、淡い片思いが終わった直後だった僕は、このセリフを読みながら本当かよと何度もつぶやいた。
上手くいこうがいくまいが、仮にも好きになった彼女である。忘れるわけないだろうとそのときは思っていた。そして、月日が経ち、現在。私は、初めて付き合った彼女の名前は覚えているが、正直、顔はおぼろげだ。
次に付き合った彼女にいたっては、ケンカ別れしたことは覚えているけれど、それ以外のことはほぼ記憶にない。前の彼女との恋愛は、すごく情熱的だったけれど、最後はあっけない幕切れだった。しかし、それも今となっては、そういったことがあったなあというくらいの感じしかしない。
学生時代の僕の人生を変えた最大の失恋だって、今では笑い話ができるくらいになっている。結局、現在進行中の奥さんを除けば、どんなに好きになった相手だって、好きになったこと以外は確実に忘れていっているのである。
一つの恋愛が終わって泣いているときに、簡単に「時が癒してくれるよ。」と声をかけられたって、「何を言ってんのよ、そんな簡単に忘れられるわけないじゃない。」って思うのは、当たり前の感情だと思う。
けれど、視点を変えて、あなたの人生という大きな目で見てみたら、失恋で泣いている時間なんてほんの一瞬でしかない。そして、ほとんどの人は月日が経つに従って前の恋を忘れて、また新しい恋を見つけにいく。そう、やっぱり忘れていくんだ。好きになったこと以外は。
ではまた次回、さらばじゃ。